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派遣薬剤師が公開データを使って時給を最大限上げる交渉術

派遣薬剤師が公開データを使って時給を最大限上げる交渉術

薬剤師の派遣会社や派遣という働き方は、登録して働いてみるまでよくわからないと思います。今回は、元派遣薬剤師で、薬剤師専用の派遣会社の派遣コーディネーターと及び薬局で人事をしていた私が、薬剤師派遣の裏の裏を説明します。そして、派遣の時給を最大限上げる交渉術をお伝えします。

時給は都内2,500~3,300円、地方3,000~4,000円

都内の相場は2,500円~3,300円程度(平均2,900円)、地方に行くと3,000円~4,000円(平均3,500円)です。高い時給で働きたい場合は地方での勤務はおすすめで、時給5,000円以上の案件も有ります。地域別の相場は下に表形式で掲載しています。

地方へ移動する場合は、引っ越し代と現地での家(大体レオパレス)を出してくれる所を選ぶべし。半年で引っ越し代10万円、家賃7万円×6=42万円と、合計50万円程度の節約になります。なお、この費用は派遣会社ではなく、派遣先の薬局が出しているものです。

また、都内でも地方でも、電車賃等の交通費は別途出してもらえます。

薬剤師の取り分は60~65%、地域別時給表も公開

薬剤師の取り分は派遣料金(薬局が派遣会社に支払うお金)の60%~65%が相場。派遣会社のマージン率は40%~35%が相場。

例えば、薬局が派遣会社に1時間あたり5,000円支払っていて、「薬剤師の取り分60%、マージン率が40%」の場合は3,000円が薬剤師に、2,000円が派遣会社に行く事となりますこのマージン率を減らして、薬剤師の取り分をいかに多くするかが重要です。

労働者保護の観点から(派遣会社が労働者から搾取する事を避けるために)、マージン率は平成24年の労働者派遣法の改正により事業所単位で公開義務があります。平均値は通常、ウェブサイト上で公開されています(例:メディカルリソースの公開データクラシスの公開データ)が、もし検索しても見つからない場合は自身の所属する派遣会社に質問すると、派遣会社には回答する義務が有ります。薬剤師の取り分である給与率は、「100%-マージン率」で算出されますが、この値は高いほうが有利です。例えば、薬剤師派遣最大手のメディカルリソースは59.9%、2番手のクラシス社の場合は64.6%で、クラシスの方が有利です。詳細は下記の通りです。

メディカルリソース社の地域別平均時給と薬剤師給与率

平均派遣料金 平均時給 薬剤師給与率
全体平均 5,262円 3,152円 59.9%
札幌支店 5,622円 3,429円 61.0%
東北支店 5,571円 3,419円 61.4%
船橋営業所 5,194円 2,913円 56.1%
大宮営業所 5,342円 3,167円 59.3%
北千住営業所 5,156円 2,885円 56.0%
立川営業所 4,889円 2,899円 59.3%
新宿営業所 4,844円 2,800円 57.8%
横浜支店 4,997円 2,905円 58.1%
町田営業所 4,919円 2,808円 57.1%
名古屋支店 5,999円 3,855円 64.3%
大阪支店 4,909円 2,897円 59.0%
京都営業所 5,663円 3,472円 61.3%
神戸営業所 4,982円 2,828円 56.8%
広島支店 5,178円 3,146円 60.8%
九州支店 5,030円 3,089円 61.4%

クラシス社の地域別平均時給と薬剤師給与率

平均派遣料金 平均時給 薬剤師給与率
全体平均 5,051円 3,265円 64.6%
東北支店 5,812円 3,798円 65.3%
大宮支店 5,365円 3,445円 64.2%
東京本社 4,942円 3,208円 64.9%
横浜支店 5,167円 3,366円 65.1%
名古屋支店 5,315円 3,410円 64.2%
大阪支店 4,989円 3,171円 63.6%

一般的には、薬剤師の給与率が高い派遣会社を選んだ方が良いです。ただし、薬剤師の給与=派遣料金×薬剤師給与率なので、マージン率が低くても、派遣料金(派遣会社が薬局に支払う料金の事、派遣料金-薬剤師給与=マージン)が低いところを選ぶと意味がないです。一概には中小派遣会社は良い案件を取りづらいのですが、企業努力(たまに営業担当のブラック労働)によって、マージンを削る事で、薬剤師の給与を上げる事は可能です。従って、大手派遣会社と中小派遣会社のどちらが薬剤師にとってお得かは場合によりますが、中小派遣会社はバックオフィス等、諸々細かい所が弱いので、大手に登録した方が無難です。

複数登録は必須、時給が高い案件が有る上位3社程度に登録して比較するのが良いです。登録しないと教えてくれない求人も有るのでとにかく登録した方が良いです。なぜ複数登録するかと言うと、派遣会社や担当に付く営業さんにも当たり外れがあり、変な対応をされたらすぐに他の派遣会社に乗り換えられる事ができるようにリスクマネジメントするためです。また、登録するとメールで良い案件を適宜紹介してくれるので、良さそうな案件があれば乗り換えても良いでしょう。薬剤師派遣業界は、メディカルリソース薬キャリクラシスの3社しか大手は存在しないので、この3社に登録しておけば間違いないです。

具体的な時給交渉の流れ

何も言わないと給与は上がらないので、派遣会社とは適宜、給与交渉をした方が良いです。逆に何も言わないと上がることは無いです。交渉の具体的な流れは下記の通りです。

# 流れ 具体例
1 所属している派遣会社の平均派遣料金と平均マージン率を確認(分からない場合は担当に確認)して、平均薬剤師時給を確認する 例えば平均派遣料が5,000円、平均マージン率が35%であれば、平均薬剤師給与率は100%-35%=65%、平均薬剤師時給は4,000円×65%=3,250円
2 自身の契約している薬局の派遣料とマージン率を確認する 例えば今もらっている時給が2,700円で、派遣料が4,500円であれば、薬剤師給与率は2,700円÷4,500円=60%
3 自身の時給か薬剤師給与率が、1で計算した平均値よりも低い場合は、理由を聞いて数字を上げてもらうように交渉する(ただし、現在の契約を修正することは難しいので、次回以降の契約で修正するできるかをお願いする) 例えば、より派遣料の高い薬局を探してもらうか、もしくは同じ薬局で良いが薬剤師給与率を60%から平均の65%に上げてもらうようにお願いする(その場合、時給は2,700円から2,925円に上がる)
4 交渉力を持つために、同時に他の派遣会社にも登録しておいて同様の平均薬剤師時給と平均薬剤師給与率数字を把握し、他の派遣会社への乗り換えを検討している事をカードに使う 例えば、「他社さんの給与率はもっと高い事を知っている、他社さんにも登録してますし、他に時給3,000円というより良い案件をもらえそう(もしくはすでにもらっている)」という事を伝える
5 実際に他の派遣会社からよりよい案件が出たら乗り換える、そうでない場合は自社でより良い案件が無いかを継続的に探してもらいつつ、他社でも良い案件があれば送ってもらうように依頼する 例えば、「継続的により良い案件があれば乗り換える石があるので、メールで求人を送ってもらうようにお願いできますか?」と依頼して、将来に備える

 

時給は100円でも高いほうが良いと思いますし、こだわったほうが良いです。時給が100円違うだけで、年間で100円×8時間×5日×52週=208,000円の収入差になりますので。

なお、調べてみると自身の条件が非常に良いという事も有り得ます。その場合は、素直に喜んで、継続的に働き続けるのがベストですね!

派遣先の選び方/地雷案件を避ける方法

登録後、希望にあった案件を紹介された後に、派遣先を選ばなければなりません。

派遣社員は法律(労働者派遣法)により、入職時の面接は禁止されています。ですので、派遣先が決まったら面接なしにそのまま契約となりますが、薬局がどうしても確認したい場合や、薬剤師が店舗を確認したい場合は「顔合わせ」や「店舗見学」という名前で面接風の事を行います。顔合わせで色々と聞いてくる事は少ないですが、もし根堀葉掘り聞いてくる場合は、派遣労働者の扱いをよく知らない薬局である可能性が高いですので警戒しておいた方が良いでしょう。

派遣会社の登録に行くときは私服で問題ないです。薬局に顔合わせに行くときはスーツを着た方が無難ですが、面倒な場合は担当の人に「スーツ持っていないので私服で行けるように調整してほしい」と伝えればOKです。

なお、派遣薬剤師は高給なので、一般的には人手不足で困っている場合でないと使いません。従って、派遣先は忙しい店舗である事を覚悟した方が良いです。たまに、社長が強烈過ぎて薬剤師が定着しない薬局や、薬歴未記載等の違法行為をしている薬局など、明らかに「問題の有る薬局」も存在します。契約期間を満了するまでは契約を円満に終わらせる事はできませんので、派遣契約は、最初は1ヶ月程度にしておくのが無難です。やばいと感じたら(たいがい初日でわかります)、すぐに担当に連絡した方が良いでしょう。そして、あまり真剣に考えすぎずに、合わないと思ったらすぐに次に切り替える方が良いです。

派遣就業中に避けるべき行動

「派遣さん」と呼ばれる事も有りますが、あまり気にしないのが吉です。特に悪気が合って言っているわけではないです。嫌な場合は担当営業の方に連絡すると、担当さんが薬局にやんわり話を通して、名前で呼んでくれるようになります。

薬剤師派遣の時給は、確実に正社員やパート(パートの時給は2,100円程度)よりも高いので、正職員やパートの方にそれを言ってしまうと不満を持たれてトラブルになる場合があります。職場では絶対に時給や月給の話はせずに、聞かれたら「企業秘密らしくて派遣会社に言わないように誓約書を書かされているんですよ~」などと言ってかわして下さい。

残業時間を何分単位で記入するのか(1分単位から15分単位まである)は、派遣会社次第なので、就業前に要確認です。始業前後の着替えの時間等、何を勤務とみなすのか?は薬局次第でもありますので、就業前に確認しておいた方が良いでしょう。薬局の経営者はこのあたりデリケートなので、この問題はあまり強気に出ずに、慎重に、時には譲歩した方が良いと思います。

残業をお願いされたら、「勤務時間は派遣会社に決められているんです~」と言ってやんわり断りましょう。あまりにも多そうであれば営業担当の方に連絡して、やめてもらうように言ってもらいましょう。

契約終了時の注意点

契約終了期限については、職場や店舗の指揮命令者(管理薬剤師とか)とは話さない方が良いです。場合によっては、辞める辞めないで揉めてトラブルになる事があるので、辞める時は派遣会社の営業さんから連絡して交渉してもらいます。場合によっては、時給を上げる交渉にも使えます。

辞める場合は遅くとも契約期限の1ヶ月前までに派遣会社の営業さんに退職の意思を伝えます。派遣先の店舗に迷惑をかけないために、また自身にとって良い条件の薬局を探す時間を稼ぐために、できれば2ヶ月前には伝えておきたいところ。

派遣先を変える時は、現存の派遣会社だけでなく、他の派遣会社でも良い求人がないか聞いた方が良いです。派遣薬剤師の取り合いなので、場合によってはマージンを優遇して良い案件をもらえる事があります。そのためにも複数登録をしておいた方が良いです。

派遣先に恵まれ、この薬局で正社員になろうかな、と思えるのであれば派遣会社に連絡してとりなしてもらいましょう。薬局長と直接交渉してしまうと、派遣会社からすると引き抜きになってしまうので、揉める可能性が有りますので。

有休価値は20万円!消化 or 買い取り交渉すべし

有給休暇は半年間勤務した後に、最低10日間配布されます(派遣会社によって10日以上の場合も有り)。

時給3,000円の場合、3,000円×8時間×10日=240,000円と高額。有給は特に何も言わない場合は退職後、もしくは1年後に消滅してしまうので、きちんと消化した方が良いです。特に休む予定が無い場合は、派遣会社に買い取り可能かを確認すると良いです(買い取るか否かは派遣会社次第ですが、派遣会社として働いてもらったほうが利益が出るので、買い取った方が派遣会社にとっても得します、ただし買い取り義務はないので、あくまで「お願い」です。)。

営業担当との賢い付き合い方

基本的に、派遣会社の営業担当の方は派遣薬剤師の味方です。彼らと良い関係を築けるように、こちらも丁寧に対応した方が良いです。ただし、派遣会社の担当営業がイケてない場合は、担当を変更してもらうようにお願いすべし。担当の交渉能力が低いために、自身の給与が上がらないという事にもつながります。

営業さんには営業ノルマがあるし、そのためにマージン率を上げる(派遣会社の取り分を増やす)ように動くことが有るので、常に他社と比較している事を伝えて緊張感をもたせ、取り分を減らされないように気をつけた方が良いです。

一般的な派遣会社のイメージはあまり良くないようですが、派遣会社は売上100のうち、60%~65%が薬剤師の給与、10%が薬剤師の社会保険と薬剤師責任賠償保険、残り20%が派遣コーディネーターの人件費やオフィス費、残りの5%が利益となるので、必ずしも暴利を貪っているわけではなく、薬剤師を搾取しているわけではないです。むしろ経営は結構カツカツだったりします。

まとめ

    1. 時給相場は都内2,900円、地方3,500円
    2. 複数登録は必須、少なくとも3社に登録して比較する
    3. 薬剤師派遣業界は、メディカルリソース薬キャリクラシスの3社しか大手は存在しないので、この3社に登録する
    4. 平均値と自身の時給/薬剤師給与率を把握しておいて、給与交渉は適宜行う
    5. 派遣先を変える時は、契約期限の1~2ヶ月前までには意思を伝える
    6. 派遣先を変える時は、登録した他の派遣会社にも良い求人がないか聞いて、天秤にかけてよりよい案件を探す
    7. 有給は必ず消化 or 派遣会社に買い取り可能か確認する

個人的な意見としては、薬局としても足りない店舗に薬剤師を配置できますし、薬剤師としても高い時給で働けますので、薬剤師の派遣自体は良いことだと思います。ただ、薬剤師さんはあまり労働条件改善のために意見することが苦手な場合が多いので、派遣で働く前にこのような知識をつけておくと、よりスムーズに行くのではないかと思っています

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